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神祇調度品職人 牧圭太朗氏 インタビュー

2023/10/31

 あなたの経歴を少し教えてください。どのようなことに影響されて今のお仕事を選択されたのでしょうか?

 昭和52年10月18日生まれ。18歳の時に建築専門学校へ入学。今の基礎となるものづくりと制作図面の製図の技術を学びました。20歳で建築関連企業へ就職し、建築構造物の制作手順・進行管理業務などに従事しました。

 27歳の時に一念発起し、幼い時から馴染んでいた家業を四代目として就く決心をしました。大正7年創業の家業は、神祇調度品の制作を行っており、神宝殿内木具調度具、神社・家庭用神祭具、地蔵堂、神輿などの製作、修復に携わることになりました。

 職業上のキャリア(旅路)で遭遇した最大の難関は何でしたか?

 コロナ禍においては多くの神事、祭礼が中止となり、新調品の注文はもとより、修理などの機会も少なくなりました。事業としての継続が危ぶまれる難しい時期にも遭遇しました。

 基本的に神祇調度品の材料には樹齢250年から300年の緻密で美しい年輪を刻む、高品質な天然木曽檜が使われます。今、この天然檜となる木材の減少は危機的な状況と言えます。入手困難となった天然檜は数の上でも入手困難となり、価格面でも高騰しています。

 自分の仕事のどこがお好きですか?

 受注した仕事の直前に自分仕様の道具の手入れにとりかかります。鑿(ノミ)、鉋(カンナ)、鋸(ノコギリ)、罫引き(ケビキ)などいずれも自分の納得いく長さ、角度に研ぎ終わり、準備が完了した時にほっと一息します。それから丸太の製材にとりかり、曲木(まげき)が綺麗に曲がった時、鉋仕上げが終了した時には達成感を感じることができます。

 一般的な1日の仕事の流れについて教えてください。

 9時から18時までは仕事の受注段階により内容が異なります。1日中天然木曽檜の買い付けに出かけたり、製材所に赴き、丸太を希望の使用のサイズに製材・指示したり、それらは1日を要することもあります。

 工房内では帯鋸盤(おびのこばん)での木取や製材、方木、罫引き(ケビキ)などを使った墨付け、鑿(ノミ)、鉋(カンナ)、鋸(ノコギリ)を使った加工・仕上げなど多種多様な工程で一日が始まり終わります。

 創作活動のインスピレーションの源は何ですか?

 私は純粋な職人で作家ではありませんので、創作活動はしていません。仕事の依頼は、もともと昔から伝わる仕様の再現であり、そこには創作的な要素は一切はいりません。

 一方でそれぞれの注文に応じて自分好みの道具類を揃える時間はインスピレーションが一番働いていると言える   かもしれません。祖父や父の道具を使っても決して納得のいく作品には仕上がりません。私の職人としての道具が全ての作品・製品の「源」となっていると言えます。

 今後2、3年の計画や目標をお聞かせください。何か成し遂げたい目標をお持ちですか?

 文化庁の京都移転に伴い、数々の文化財の修復の機会など京都文化財、特に神祇調度品が注目される機会も増えてくると思われます。京都の職人としてそれらの事業の一翼を担うことが出来ればうれしく思います。

 工芸品やデザインを愛する人たちにあなたの作品や製品を薦める理由を教えてください。人々の生活にどのようなプラスの影響を与えることができるのでしょうか?

 日々取り扱っている木のぬくもり、木を削った時の香りは、ギスギスした世の中の一服の清涼剤と言えます。各家庭では既に神棚の無いことが多くなっています。それでも私の作った神棚が、家や会社で神様に感謝の気持ちを伝えることが出来るきっかけになればありがたいと思っています。

 交通安全・商売繁盛・社運隆盛などお願い事にはいろいろありますが、何か1日を振り返り、人として「感謝」の気持ちを伝える機会が増えることを願っています。

 これからも先代からの伝統技術を残して行くことはたいへん重要だと考えています。

 

 神祭具に関して見聞を広め、工房見学をご希望の方はこちらからご予約ください:☞ 牧神祭具店

 文・写真提供: Anastasiya Bulkavets (ArigatoCreative.co)

 翻訳・編集 京都伝統産業ミュージアム 佐藤裕