ブログ

工房訪問シリーズ 錦の伝統織物 光峯錦織工房

2022/03/15

世界中の日本織物ファンの皆様へ。

京都の伝統工芸がお好きな方なら、京都・西陣織のことはご存知だと思いますが「錦織」って聞かれたことはありますか?金糸や銀糸をふんだんに使い、色とりどりの柄を織り込んだ豪華な絹織物のことです。

龍村光峯(たつむらこうほう)は「錦織」を専門とする数少ない会社のひとつです。私たちは到着するとすぐに錦織作家の4代目である龍村周(たつむらあまね)さんのお出迎えを受けました。会社は19世紀末に初代の曽祖父によって創業されました。

こちらでは 「錦の伝統織物 光峯KOHO」として、また古代織物の研究や修復を手掛けるセンターとして運営されており、その伝統的な造りに非常に心を動かされました。訪問者は30年前に建てられたという比較的新しい建物、高い梁の天井、緑の中庭、そして地下1階のある伝統的な手織り機が並ぶ工房で歓迎を受けることになります。

工房訪問は、代々龍村家が長年にわたってデザイン・制作されてきた数々の織物作品のギャラリー見学から始まります。その美しさに魅了されながら、龍村さんに錦織のこと、そして錦織がどのように織り上げていかれるのか、さらに詳しくお尋ねすることにしました。

伝統的な織物の製造工程のうち、「織(おり)」自体は最後の工程であり、錦織の製造工程はなんと70工程にも及んでいます。それぞれの作業は分業制で行われるため、結果、織物は最初から最後まで70人以上の職人の手を経て完成することになります。龍村さんは自身の会社の役割を、柄のデザインから織り上げまでの全工程と、それらに携わるすべての職人のチーム連携を管理する「オーケストラの指揮者のようなもの」とたとえて話されていました。

龍村さんは、織物会社の代表を務める傍ら、一般財団法人日本伝統織物研究所の代表理事として組織を運営され、古代の織物の断片を研究、そしてその輝きを再現することにも携わっておられます。また、龍村周さんは京都の織物産業が危機的状況にあることを懸念され、古い道具や技術を後世に引き継ぐと同時に、今では働く機会の少なくなった職人の仕事を増やすことにも注力されています。

次回は錦の伝統織物作家、龍村周さんへのインタビュー。その後、工房での実際の機織り体験をご紹介する予定です。どうぞお楽しみに! 

工房見学と機織り体験のご予約をご希望される際にはこちらをご参照ください : 光峯錦織工房(日本伝統織物研究所)

写真と本文:Anastasiya Bulkavets (ArigatoCreative.co)

日本語翻訳 : 京都伝統産業ミュージアム 佐藤裕