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堤淺吉漆店 専務 堤卓也氏インタビュー

2024/02/27

 1)あなたの経歴を少し教えてください。私生活ではどのようなことに影響されて今のお仕事を選択されたのでしょうか?

 北海道大学農学部を卒業後、岩手の鶏肉会社の札幌営業所で働いていました。

 弊社で製造している光琳という製法の漆がとても手がかかるため手伝って欲しいと社長である父に言われ2004年に家業である漆精製の仕事に帰ってきました。

 

2) 職業上のキャリア(旅路)で遭遇した最大の難関は何でしたか?

 大量生産、大量消費社会の中で減少する漆の消費量。その中でどうやって現代生活の中に漆を取り戻していくか。

3)自分の仕事のどこがお好きですか?

 漆はウルシの木の育った環境、採取する時期や採取する人のやり方などで様々な特徴を持ちます。自然素材であるが故の多様性を感じながら様々な精製漆を作り出すところや、自然から素材を頂き、その素材を漆の精製人や塗り手がつながりながらモノを作るところが面白いです。

4)一般的な1日の仕事の流れについて教えてください。

 漆のツケをとる(状態をガラス板でチェックする)。クロメ鉢という大きな鉢の中で生漆を練りながら水分をとる作業を朝から夕方まで行う。 その間ツケを見ながらお客さま(塗師など)の要望(艶、乾き、粘り)に応じた漆を調合する。色の調色や練り合わせ作業を行っています。

5)創作活動のインスピレーションの源は何ですか?

 海や山で過ごす時間がそれにあたります。

6) 今後2、3年の計画や目標をお聞かせください。何か成し遂げたい目標をお持ちですか?

 現在、社内に若手の職人が働ける工房や工芸の魅了を伝えるショールームやワークスペースを整備中です。工芸は「植えるから始まる自然素材を使った人の手によるモノづくり」と考えています。その魅力を伝えるため、2019年に始めた京都京北地域でのウルシの植栽や市内工房での漆精製、モノづくりに至るまでその過程感じてるもらえる体験なども行う予定です。漆の可能性を広げ、人と自然を繋ぐ工芸の価値を世界中の人に伝え、漆や工芸を現代のスタンダードにしていきたいです。

 7) 工芸品やデザインを愛する人たちにあなたの作品や製品を薦める理由を教えてください。人々の生活にどのようなプラスの影響を与えることができるのでしょうか?

 漆はウルシの木の樹液、15年育てた木から200gほどしか採取できない貴重な森の恵みです。縄文時代から塗料や接着剤、構造体にも使われてきました。拭き漆キットはそんな漆を用いて自分でお箸やお椀を作ることができます。少しずつ進める作業はモノを作る楽しみや修理して長く大切に使う心を育みます。

 自然から素材をいただきモノを作る工芸は、そもそも自分たちの身の回りの素材をいただきモノを作ってきました。これ以上取りすぎたら無くなる、次の世代のために素材を育てておこう。

 そんな営みは自然と人のバランスの中で成り立ってきました。ワンクリックでなんでも買える現代、モノづくりの背景が見えにくくなっている時代の中で漆はもう一度自然との繋がりを感じさせてくれる素材です。

工房見学や伝統の漆精製技術技術を詳しく知りたい方はこちらから体験予約をお願いします。:堤淺吉漆店

インタビュー・翻訳と画像提供:Anastasiya Bulkavets ( ArigatoCreative.co ) 

編集:京都伝統産業ミュージアム佐藤裕