職人インタビュー

 

牧圭太朗牧神祭具店

●三代で繋ぐ伝統の技

――後継者問題に悩まれる職人さんが多いなか、親子三代でお仕事を続けておられるのはとても幸せなことですね。
97歳の祖父はもうほとんど作業はしませんが、時折私たちの作業を覗いてはアドバイスをしてくれます。神祭具にはひとつとして同じ仕事がなく、毎回、工夫が必要ですから祖父の経験を頼ることができるのはありがたいことですね。
祖父であれば、うちが大正7年(1918)に創業してから手がけてきた仕事の多くをわかっていますから、文字通り「生き字引」なんですよ。

●木を自在に扱う

――「神祭具」とは聞き慣れない言葉ですが、どのようなものをつくるお仕事なのですか?
うちでは代々、神社に関する木工品をつくっています。お神輿やお堂、お社など建造物以外ならほぼすべてが仕事の範疇ですね。一般の方にも馴染み深いものでは神棚でしょうか。
私たちは木材同士を凸凹に加工して接ぎ合わせる「指物」という技術を使います。奈良時代の寺院など、伝統建築にも用いられている古い技法ですね。木材の「しなり」を利用して長持ちさせる日本の知恵です。木材を細かく加工するため、多くの刃物を持ち替えて作業をおこないます。とくに鉋は100本以上あるんですよ。

――工房にはたくさんの木材が保管されていますね。
木材は山から切り出したすぐの状態では使えません。通常で1年〜3年、長いものでは10年ほど寝かせて、乾かす(水分を抜く)必要があります。木は伐採し、工芸品に加工した後もずっと呼吸を続けますので、水分が残っていると経年による歪みが生じてしまうためです。金属製の釘を使うと木材の劣化を早めてしまうため、代わりに木を細く切った「木釘」を木材同士の接合に使うんですよ。

――神祭具には桧を使うんですね。
白く美しい木目を持つ桧は、神道の清浄さをあらわし、神社建築や神祭具の定番ともいえる木材です。神祭具のほとんどは漆や彩色を施さずに木地のまま仕上げるため、節の無い、柾目の桧を揃えておかなくてはなりません。私たちの仕事は木材の仕入れ、準備がひと苦労なんですよ。

●手を合わせる仕事

――このお仕事の難しさはどのような点でしょうか?
日本古来の祭祀祭礼に根ざしたものづくりですから、決まりごとを守らなくてはいけません。また、多くの方々が手を合わせる対象をつくりますので、技術を高め、丁寧に作業することはもちろんですが、何よりも落ち着いた心持ちで製作することが重要だと思っています。ときには白装束を着用し、精進潔斎してから作業に向かうこともあるんですよ。

職人紹介

牧圭太朗/Keitaro Maki

牧圭太朗/Keitaro Maki

プロフィール

昭和52年生まれ。
神具・祭礼具などの調度具を手掛ける牧神祭具店に勤める。
祖父・父に師事して伝統技法を受け継ぎ神宝殿内調度品木具・神棚・地蔵堂などの製作・修復に携わる。