職人インタビュー

 

西堀耕太郎日吉屋

●「革新」が伝統と現代を繋ぐ

――このお仕事に入られた経緯を教えて下さい。
日吉屋は妻の実家なんです。まだ結婚前の時期に初めて目にした番傘の美しさに心惹かれたのがきっかけです。当時は需要の激減と後継ぎの不在で廃業寸前だったのですが、「この美しい手仕事が消えてしまうのはもったいない。私に継がせて下さい」と。それまでは市役所に勤める公務員でしたから180度違う仕事ですね。

――職人として働くようになり、どのような点にご苦労されましたか?
京和傘について、いかに世の中で知られていないか、ということを実感しました。
京和傘が生き残っていくためには、その魅力を広く知ってもらう必要があります。とくに自然素材を駆使した巧みな構造や、職人さんの手仕事の素晴らしさを伝えることがが重要だと考え、ホームページを使った広報活動に力を入れました。当時はインターネット黎明期で、京和傘どころか、伝統工芸についてのホームページもほとんどありませんでしたね。

――現在もホームページで製法を公開されていますね。製作風景を知るとより関心が高まります。
京和傘の材料は木と竹と和紙。とってもシンプルでしょう。限られた素材で美しく、機能的な構造を生み出していくのが職人技の良さ。京和傘の製法には先人の知恵と工夫が詰まっています。
また、京和傘づくりが続けられるのは、全国各地で材料をつくってくれている職人さんたちの支えがあってこそ。京和傘はさまざまな手仕事の集合体でもあるんです。

●世界から見た日本

――京和傘の製法を活用した照明器具を海外でも販売されるなど、伝統工芸の新しい展開にも果敢にチャレンジされていますね。
京和傘の文化を未来に残すために、現代の暮らしに寄り添うものをつくりたいと考えたのが開発のきっかけでした。
京和傘の陽光が和紙にやわらかく透過する点に着目し、その効果を最大限に活かしたランプシェード「古都里 ―KOTORI―」シリーズを製作しました。
この商品が、海外では日本文化を知る入り口として、国内では職人の手仕事を再評価するきっかけとなり、うれしく思っています。

――京和傘の技術でランプシェード!発想の転換ですね。
京和傘とランプシェードは一見、かけ離れているようですが、じつは同じ構造、同じ素材。技術も京和傘の製法をそのまま応用しています。つまり、京和傘職人にとって負担が少ない新製品開発だったんです。
照明はインテリアの一部ですから、京和傘の特色を出しながらも主張し過ぎないデザインにしました。私たちは照明器具に関しては門外観ですから、インテリアデザイナーさんをはじめとする各分野の専門家の方とも協業しながらの開発でしたね。
京和傘と同じ構造で、コンパクトな筒状に開閉することが可能です。機能性はもちろん、輸送の利便性も高まりました。海外に展開する際にはこの強みが活きています。

――伝統的な京和傘を受け継ぎながら、次々と新しい製品を発表されてきた原動力は?
「伝統は革新の連続」という言葉がありますが、一度立ち止まってしまうと文化はその瞬間から廃れてしまうと思います。失敗を恐れず、「伝統の技」を現代、そして未来に活用する方法を探ることが工芸の次代を決定するのではないでしょうか。

職人紹介

西堀 耕太郎/Kotaro Nishibori

西堀 耕太郎/Kotaro Nishibori

プロフィール

唯一の京和傘製造元「日吉屋」五代目。
和歌山県新宮市出身。
カナダ留学後市役所で通訳をするも、結婚後妻の実家「日吉屋」で京和傘の魅力に目覚め、脱・公務員。職人の道へ。2004年五代目就任。
 「伝統は革新の連続である」を企業理念に掲げ、伝統的和傘の継承のみならず、和傘の技術、構造を活かした新商品を積極的に開拓中。グローバル・老舗ベンチャー企業を目指す。