職人インタビュー

 

藤澤典史京金箔押 常若

●京都の仏壇・仏具を彩る金箔の輝き

――このお仕事を始められたきっかけを教えて下さい。
幼い頃より社寺仏閣などに関心が強く、地域のお祭りの際にお神輿に見惚れるような子供でした。「文化財に携わる仕事がしたい」と思い、高校卒業後に進学した専門学校では漆芸や彫刻などを学びましたが、卒業後は箔押師の師匠のもとへ弟子入りすることに。一般的にはあまり知られていない仕事ですが、寺院の内装を彩ったり、仏像に施したりと、仏具の荘厳さを表現するのに欠かすことができない技術に心惹かれました。

――その後、約20年間にわたって師匠のもとでお仕事されたんですね。
京都の仏具の世界で「名工」と呼ばれる師匠のもとで多くのことを学び、気がつけば20年が経っていたという印象です。さまざまな仕事に携わらせていただき、箔押師として多くのことを学ばせていただきました。
平成27年に独立しました。まだ師匠の足元にも及びませんが、京都の仏具職人として一歩ずつ着実に歩んでいきたいと思っています。「常若」という工房名には「常に瑞々しく、新鮮な気持ちでありたい」という意味を込めました。

●箔押師の仕事

――金箔は「貼る」ではなく、「押す」と表現するんですね。
よく間違われますね。実際に作業を見て頂ければよくわかりますが、竹製の箸で掴んだ金箔をそっと押さえるようにして施していきます。あまり馴染みの無い仕事だけにワークショップや作業実演の機会には多くの方が集まって下さいますね。

――そもそも金箔とはどういったものなのでしょうか?
純金にわずかな銀と銅を混ぜて、打ち延ばしたものです。小豆ほどの大きさの金をひたすら延ばすことで畳一畳分にもなります。現在、9割以上の金箔が石川県金沢市で生産されており、多くの「箔打職人」の手仕事によって金箔が供給されています。
金箔の厚みはおよそ1万分の1ミリ。人の吐息で舞い上がってしまうほどの薄さですから素手では触ることもできません。箔押師の修業は金箔の扱いを覚えることから始まります。

――寺院で金箔が施された仏具を前するとその輝きに圧倒されてしまいます。
金箔の輝きにも種類があるってご存じですか?接着剤にする漆の乾き具合によって金箔の輝きは変わるんです。京都の仏具などはどっしりとした重厚感のある艶が特徴で「重押し」と呼びます。一方で、金の色をピカピカに光らせた押し方は「艶押し」呼びます。各産地ごとに好みがあり、それぞれに特徴ある職人技が生まれました。材料は同じでも、技術や工程次第でまったく違った表現ができるのが金箔という素材の面白さ。私たち箔押師は仕上がりの金箔の輝きを見極めるのが仕事なんです。

●新しい挑戦

――藤澤さんは仏具などの伝統的な金箔押しだけではなく、ファッションやインテリアなどの新しい分野にもチャレンジされていますね。
近年、さまざまな方面からお話を頂くことが多く、苦労しながらも楽しくお仕事に取り組ませていただいています。金箔は本来、木材に漆で接着するものですが、革やプラスティックなどへの素材にも挑戦しています。仕上がりが美しいだけではなく、耐久性も併せ持つ金箔の施し方を試行錯誤中です。
新しい分野への挑戦は、伝統工芸とは違い、デザイナーさんとの協業などは慣れない作業も多く大変。でも、職人として大きく成長できる経験でもあります。今後も「伝統」の枠に縛らず、未知への挑戦を続けたいですね。

職人紹介

藤澤 典史/Norifumi Fujisawa

藤澤 典史/Norifumi Fujisawa

プロフィール

昭和50年 京都市生まれ。
平成6年 京都伝統工芸専門校入学
平成 8年 卒業後、伝統工芸士で金箔押師、岡本正治に師事。 全国の寺社仏閣の金箔押に携わる。
平成27年 独立(京金箔 常若 設立)