職人インタビュー

 

松井成樹松井酒造

京の味、洛中の酒造り

創業から約280年。洛中(京都市内中心部)最古の歴史をお持ちなんですね。
弊社は江戸時代中期の享保11年に兵庫県の香住で創業し、後に京都へ移ってきました。大正時代末期に現在の場所に移転し、現在に至ります。京都の鮭といえば伏見が有名ですが、かつては洛中でも盛んにおこなわれていました。現在ではうちを含む2軒の酒蔵があるのみです。

蔵に最新設備が導入されていることに驚きました。
コンピュータによる温度管理を徹底し、年間を通して醸造できる状態を保っています。衛生面においてもより高いレベルで管理できます。うちは京都でもっとも小規模な酒蔵です。生産量が少ないからこそ、思いきった改革もしやすい。伝統的な酒造りを大切にしながら、杜氏の技術と経験の助けになる設備機器をうまく利用したいと考えています。

伝統技術とテクノロジーの融合ですね。ほかにもソーラーパネルによる発電など酒蔵として先進的な取り組みが多いですね。
京都の市内中心部で酒造りを続ける以上、環境への配慮は避けて通れません。現在、酒造りに必要な電力の約60%を蔵の屋根に設置したソーラーパネルの発電でまかなっています。

酒蔵の個性を楽しむ

酒蔵の個性はどのような部分にあらわれるとお考えですか?
まずは材料ですね。日本酒は水、米、麹からできていますが、なかでも水の影響はとても大きい。弊社では地下60メートルから地下水を汲み上げて酒造りに使っています。戦後、地下鉄工事の影響で京都の地下水脈が大きく変化したこともありましたが、その際にはより安定した水を求めて一時的に酒蔵を伏見へと移転しています。水質は蔵の味そのものと言っても過言ではないと思います。
京都の地下水は軟水。一般的に「女酒」と呼ばれる甘口になる傾向があります。そこに厳選した米や麹を加え、杜氏の技術で蔵ごとの味をつくっていきます。同じ土地でも、それぞれの酒蔵の個性が際立つのはそうした理由からですね。日本酒をお楽しみになる際は、そうした酒蔵ごとの個性や地域性を想像して頂くと、また違った味わいを発見できるかもしれません。